・Type A-2の選び方(基礎編)
誰もが憧れるType A-2ですが、購入に際していろいろ迷うところは多いと思います。「ブランド」「色」「シルエット」そして「サイズ感」... 実際ところ「モノ選びの基準」は何処なのでしょうか。ここでは20余年間取り扱っている私たちショップの目線から「Type A-2の選び方」を伝授したいと思います。

1.どのブランドを選ぶ?
現在、日本国内で手に入るType A-2のブランドは海外ブランドを含め10社前後です。しかし、旧リアルマッコイズから派生した様々なレプリカブランドに絞ればその数は半分ほどとなります。 では、どのブランドを選べばよいのでしょうか。結論から言えばそこに答えは在りません。知る限りどのブランドも経験豊富な熟練スタッフが企画し、専業の工場が縫製を手掛けているからです。 むしろ大切なのはアフターケアです。Type A-2に限りませんが、長年の着用で糸のほつれやニットリブの劣化、ジッパーの不良など、様々な不具合が発生してきます。 その際に適切なリペア対応が出来るか否かが問題になります。私たちが取り扱うブランドは、すべて日本のメイカー。何も心配のない優良なメイカーばかりですのでご安心ください。

2.どの色を選ぶ?
Type A-2は基本的に茶色の馬革が主流となります。色の濃い茶色をシールブラウン、明るめの茶色をラセットブラウンと呼び大別されます。其々のイメージについては「革見聞録」を参照してください。 Type A-2は、1930〜40年代のレザー製フライトジャケットですので、時代考証に合った着こなしを志すのであれば、あまり色の濃くない方が使い易いと思います。只、1990年代後半以降、色の濃いシールブラウン(正確にはダークシール)に 人気が集中しているように思えます。世の中に出まわるType A-2が殆どシールブラウン系であるのが事実で、それらに見慣れてくると「カッコ良く着るならシールブラウン」と言う風潮が定着してきた理由です。 しかし長年、販売に携わり自分たちでも着用していると結局、両方のカラーが気になってしまいます。それはType A-2の魅力が色ではなく、シンプルで格好良いデザインに集約されるからでしょう。複数枚数のType A-2を所有する方が多いのも頷けます。 最初はご自身が抱くイメージで選ばれるのが最良です。

3.シルエットは?
この10年でシルエットも少しずつ変わってきています。当店がType A-2をカッコ良く着る為にシルエットを模索し、身幅を細くしたオリジナルシルエットで別注A-2をリリースしたのが2007年でした。 THE FEW製SPIRITS SPECIALがそれです。2007年から3年間続けてリリースされたそのモデルは、後にTHE FEW のレギュラーモデルにも影響を与え、彼らは細いだけでなく着丈をやや長くしたオリジナルA-2をリリースさせました。 その後、リアルマッコイズやレインボーカントリーでも着丈の長いType A-2がラインナップされ現在に至ります。最も新しいモデルとしては、2017年秋にリリースされる「トイズマッコイA-2 RWA」が在ります。

4.サイズ選びは?
1990年代後半の黄金時代、ヘソが出るくらいに短い着丈のA-2を着る習慣が一部で在りました。「小さいサイズで着るパツパツスタイルが良し」とされていた時代です。 「通常より1サイズ以上下を選ぶ」のが常識とされていました。しかし、そんなサイズ選びはやがて封印されて行きます。Type A-2を好んで出来るだけ多く着るのであれば、インナーを無視したサイズ選びが邪道であるのは言うまでも在りません。 通常、衣料...特にトップスの場合、着丈がポイントとなります。洋服のパターン(図面)もサイズ表記に合わせて着丈が決められています。通常、WEBサイトの商品ページには、サイズ表として採寸データが記載されています。そこには最低でも「肩幅」 「身幅」「袖丈」「着丈」の4サイズが記載されています。さて、ここからが重要な話。この中で身長と綿密な関係にあるのが着丈と袖丈です。身長に合わせて裄丈が決まるからです。「タイトに着たい!」だけの目的で、身幅の数値だけを見てサイズを決めた場合、 身長が合ってていないとバランスが崩れます。例えば、175cmの身長で36in以下を選ぶのはあり得ません。私達が決してお薦めしないサイズ選びです。一方、168cmの身長で42inか、それ以上を選ぶのは身幅に合わせているケースが殆どですからそれは致し方がないでしょう。 後者の場合、リペア対応等で袖丈や着丈を修正するのは可能ですが、前者のように足らない丈を伸ばすことは出来ません。そしてもう一つ、革を「体型に合わせて調教してあげる」儀式も必要で、それをすればやや大きめでも見違える様に格好良く着ることが出来るのです。 ※革の調教儀式は後日、革見聞録で記載します。そしてここからは、ややマニアックな話。

・Type A-2の選び方(応用編)
ここではやや変わった目線で「Type A-2を選ぶ」選択技を記載しましょう!

1.革の風合いで選ぶ(その1)
革愛好家にとってType A-2選びの基準は何処にあるのでしょうか? こんな話を聞いたことが在ります。 「A-2を着ているとギシギシと擦れる音してがうるさい」。実際にこんな経験のある方も多いでしょう。ところでこの「ギシギシ音」は何故出るのでしょうか? 思うに音を出すには条件が整う必要が在ります。 それは「ある程度硬い革であること」と「塗膜によって出るものと出ない物がある」ことです。長年いろいろなType A-2に接してきた私たちの経験値ですが、昨今の柔らかな馬革は余り音が出ないように思われます。柔らかい革に仕上げる為の工程として「革を揉む」作業があります。 多く揉まれた革は繊維が切れて柔らかくなり着用時に抵抗感が少なくなります。昨今の主流です。最も静かにしていないといけない場面ではこの「ギシギシ音」が意外と耳障りなので出ない方が良いかもしれません(笑)。

2.革の風合いで選ぶ(その2)
昨今の馬革は2次鞣し(着色から仕上げ)の段階で様々な薬品が使用されます。そのレシピの多くはタンナー独自のものが多くシークレットです。最終工程の着色方法の違いで、Type A-2を購入してからオイルを塗る作業を必要とする革や一切を必要としない仕上げが在ります。 ここ数年ではオイルを塗るメンテナンスを楽しむことが許される(出来る)革のA-2は殆ど無くなりました。ブーツのメンテナンスと同じで、選ぶオイルを間違えると後悔に繋がるケースも多いのです。個人的にはオイルではなく、ワックスぐらいは使える範疇を残して欲しいと思います。

3.革の風合いで選ぶ(その3)
最近は余り耳にすることが無くなりましたが、以前は各メイカーが「1.1mm厚」「1.2mm厚」などと革の厚さをアピールしている時期がありました。馬革の場合、牛革と違い原皮の厚さが1.5mm以下と薄い為、全体を革鋤機で整えることが在りません。 その為、個体それぞれに差が出るのです。厚い革の場合は着心地が重厚になったり、重くなったりします。革の厚さや硬さの差で着心地やサイズ感に大きく影響が出ることを覚えておきましょう。同じサイズなら薄く柔らかい革の方が楽に着れる為、サイズが合っているように思えますが、その逆の場合は小さいと錯覚してしまいます。

※以下は補足として追加しました(2017年8月29日)。
革は伸びる!伸びない?
「着ているうちに伸びてくるからそのくらいのタイト感で良いですよ」・・・とあるSHOPの接客話法のひとつです。しかしこれは大間違い!世の中には確かに伸びる革が無い訳では在りませんが、ことType A-2においては皆無と思ってください。むしろ「伸びるより縮むと思った方が正解です」。ここ数年の馬革は仕上げが柔らかくなり、オイルも十分に入っていますので縮む可能性は低くなりましたが、それでも伸びることは期待できません。革厚にして1.2から1.5mmmの厚さです。伸びるわけが無いのです。小さめのサイズを無理に着ていると、アームホールなどの縫製ステッチを起点に革が切れるトラブルが出ます。ステッチが切り取り線になるのです。その部分で革が切れた場合は修復が出来ず、大切な相棒が無駄になってしまいます。それはライニング生地にも言えます。Type A-2はサマーフライトジャケットなのでライニングは薄いコットンブロード生地が使用されています。平織りの生地で引き裂きに弱い弱点があります。表の馬革だけでなく、内部での破損を招く危険が在る点も覚えておきましょう。タイトに着ることによる弊害...この様な間違った解釈はしないでください。

如何でしたか。 本格的なType A-2シーズンを迎えるこの時期に少しでもお役に立てれば幸いです。